フリーランス プログラマーのための確定申告マニュアル

1.プログラマーに確定申告は必要?

副業・本業を問わず自分で収入を得ているプログラマーにとって、確定申告は避けて通れない手続きです。この記事では、次の3点が分かるようにお伝えしていきます。

  • 副業プログラマーが「確定申告」する際の注意事項
  • 本業プログラマーが「確定申告」する理由
  • プログラマーの「節税対策」と注意点

2.プログラマーが確定申告をする条件

副業やフリーランスに成り立てだと、「確定申告」に馴染みがないプログラマーも多いでしょう。確定申告の仕組みと注意するポイントを解説します。

2-1確定申告は「所得税」を決める手続き

毎年2月16日~3月15日のあいだに、税務署に申請する確定申告。これは、前年の課税対象額に対して「所得税」を決める手続きです。
副業・フリーランス・個人事業主として収入があるプログラマーは、必要に応じて「確定申告」をしなければいけません。個人事業主の場合は、確定申告と合わせて所得税の納付も必須となっています。

3.副業プログラマーの確定申告

3-1所得額「20万円以下」でも確定申告は必須?

会社員などの給与所得者の場合は、副業での所得額の合計が「20万円以上」になると、確定申告が必要です。所得額は、プログラマーとしての収入から必要経費を差し引いた額を指します。

「20万以下であれば確定申告は不要」と思われがちですが、実は誤解を含んだ認識なので注意してください。
というのも、所得額(課税対象額)に応じて決まる税金は「所得税」のほかに「住民税」もあるからです。

  • 所得税:国に納める「国税」、所得額20万円以下なら申告不要
  • 住民税:市区町村に納める「地方税」、所得額20万円以下でも発生する

税務署に確定申告をしない場合は、市区町村の役所に住民税の申告を行なう必要があります。一方で、税務署に確定申告をしておくと、そのデータを元に市区町村が住民税を計算してくれるので、確定申告をしておいたほうがラクなのです。

出典:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(国税庁)

3-2医療費控除・ふるさと納税などの還付金を受けるには「確定申告」が必須

「住民税」にまつわる手続き以外にも、副業プログラマーの所得額が20万円以下であっても、確定申告が必要なケースがあります。たとえば、税金の還付金目的で医療費控除やふるさと納税の寄付金控除を税務署に申告する場合です。

この際、「本業の給与所得と控除に関する項目は申告したけれど、副業プログラマーの所得を記載しない」というのは誤りなので注意してください。所得税に関しても、給与所得と副収入の合計額から算出されます。

3-3確定申告時には「住民税は普通徴収」を選択

確定申告書の「二表」には、住民税の徴収方法を選択する項目があります。

  • 給与から差引き
  • 自分で納付

こちらは「自分で納付」を選択してください。給与から差引きにしてしまうと、「住民税」が会社の給与から算出された納税額とちぐはぐになってしまい、会社に副業していることがバレてしまいます。

4.本業プログラマーの確定申告


フリーランスや個人事業主のプログラマーは、確定申告を避けて通れません。税金を納めるなかで、特に事業に大きく関わってくるのは以下の3つです。

  • 所得税
  • 住民税
  • 事業税

これらは自身の確定申告により算出されるため、必要経費などの仕組みが分かっていないと、本来の納税額よりも多く支払ってしまう可能性があります。

4-1確定申告時の計算方法

売上(収入)から必要経費や各種控除を引いた合計の所得金額が、所得税の課税対象です。その課税対象となる額によって、税率は5~45%と大きく異なります。

<課税対象となる額=(所得の合計金額 × 税率)-控除額>

課税される所得金額の合計 税率 控除額
1,000~194万9,000円 5% 0円
195万~329万9,000円 10% 97,500円
330万~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万~3999万9,000円 40% 79万6,000円
4,000万~ 40% 479万6,00円

出典:No.2260 所得税の税率 (国税庁)

課税対象となる金額が大きい分、税率も高くなりますが、控除額も増加します。
課税対象が「300万」だった場合、所得税の計算式は以下の通りです。

  • (300万 × 10%)- 97,500円 ー 税額控除

※「税額控除」は売上(収入)に対する控除とは異なる仕組みです。
※「税額控除」には、さまざまな種類が設けられています。

4-2確定申告のメリット「還付金」が大きい!

プログラマーは、クライアントやお客様から「受注」で仕事をしている人がほとんどでしょう。特に在宅型のプログラマーの場合、ギャランティから源泉徴収されているケースも多くなっています。フリーランスや個人事業主にとって源泉徴収は、所得税を仮の金額で前もって納めている「予定納税」にあたります。

源泉徴収率は報酬額によって異なり、以下の通りです。

  • 100万円以下…10.2%
  • 100万円以上…100万円を超えた額に20.4%をかけ、その額に10万2,100円を加える

経費などを差し引いていない年間売上が500万円で、1件あたりの報酬が100万円以下だった場合、源泉徴収されている所得税は「約51万円」です。

しかし、本来の所得税の課税対象額は「(所得の合計金額×税率)-控除額」で計算されます。つまり、売上が500万円だったとしても、そこから経費や控除額を引いた残額に税率をかけることになるのです。経費や控除額が320万円だった場合の所得税は以下の通りです。

  • 売上500万ー経費・控除額320万円=残額180万円
  • →残額180万×税率5%=得税9万円

源泉徴収に関して確定申告をしなかった場合、差額はなんと約42万円にものぼります。

  • 源泉徴収:約51万円
  • 確定申告:約9万円

まちがいなく納税しすぎているので、その分を還付してもらうように申告してください。

4-2-1「支払調書」は不要3

源泉徴収を記載した「支払調書」を送ってくれるクライアントもいますが、確定申告時にはなくても問題ありません。というのも「支払調書」は、クライアントが税務署に源泉徴収額を報告する書類なので、報酬を支払った相手に送付する義務はないのです。

年が明けたらクライアントに支払調書を要求するフリーランス・個人事業主もいますが、その時期は相手も多忙を極めている可能性があります。大切な取引先に迷惑をかけないよう、日頃から帳簿を付けるように注意しましょう。
出典:No.2030 還付申告(国税庁)

5.プログラマーの確定申告手順

実際の確定申告の手続き方法や注意事項を解説していきます。

5-1提出方法

確定申告書の提出方法は下記の3通りがあります。

  1. 管轄の税務署で手渡しする
  2. 申告書などを郵送する
  3. 「e-Tax」(電子申告システム)を使う

税務署は、確定申告期間内は非常に混むので、郵送やe-Taxを使うと便利です。郵送の場合は、消印日が提出日扱いになります。

5-2記載方法

確定申告書には「A」と「B」の2種類があり、副業・本業問わずプログラマーは「B」を選択してください。「A」「B」どちらの申告書にも、第一表から第五表までありますが、基本的には第一表・第二表を使います。

手順としては、自身で作成した「収支内訳書」や「青色申告決算書」を元に、「第二表」→「第一表」の順に転記していきます。第二表には「所得の内訳」を記載する場所があり、取引先ごとに収入合計額と源泉徴収合計額を記入します。

プログラマーは複数の取引先から報酬を受け取ることが多く、第二表に収まらないケースもあるでしょう。その場合は、「所得の内訳書」を使用してください。

参考:所得の内訳書(国税庁)

6.プログラマーが確定申告するときの「節税」のポイント


所得税と住民税は、前年度の課税対象額から算出されるので、節税のコツを把握しておきましょう。

6-1青色申告を行なう

確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。青色申告は、申告内容に多くの情報を記入する必要があるものの、節税においてメリットが大きくなっています。

  1. 最大で65万円が所得から控除される
  2. 経費計上できる内容が増える
  3. 過去の赤字の繰り越しができる

青色申告をするには、あらかじめ「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。開業から2カ月以内が申請期限となっているので注意しましょう。なお、副業でも青色申告は可能です。

6-2しっかり経費計上する

売上に対してきちんと経費計上しておくと、課税対象額が抑えられます。プログラマーが経費計上できる主な項目をチェックしてみましょう。

  • 地代・家賃…オフィス賃貸料など
  • 賃借料…各種機材や事務機器のレンタル代など
  • 旅費交通費…交通費、ガソリン代、駐車料金代など
  • 通信費…電話料、プロバイダ利用料など
  • 会議費…打ち合わせのための会場代や飲食代など
  • 新聞図書費…書籍・雑誌・マニュアル代など
  • 研修費…講習会やセミナー代、教材費など
  • 事務用品費…文房具やソフトウェア、事務機器など
  • 消耗品…名刺をはじめとした、事業に必要な日用品など

ただし、これらが経費として計上可能なのは「事業として必要なケース」のみです。自宅で仕事をしているプログラマーは、生活の中で使った費用と、事業用の費用を分けなければならないので注意してください。(「家事按分」という)
バーチャルオフィスなどを借りる場合は、家事按分せずに「支払手数料」または「外注工賃」として計上できるので便利です。

また、ソーシングサイトなどを利用して仕事を請ける場合、振込時に差し引かれた支払手数料も経費として計上可能です。
その他に、開業届を出している個人事業主は「個人事業税」も全額経費として計上できるので忘れないようにしましょう。

6-3確定申告漏れ・忘れの「ペナルティ」には注意!

確定申告の受付期間は、毎年2月16日~3月15日です。この期間を過ぎてしまったり、申告を忘れてしまったりすると、「延滞税」や「無申告加算税」が課せられ、より多くの税金を納めなければなりません。

また、申告内容を偽って課税対象額を低くする不正行為には、「重加算税」がかけられ、非常に高額な納付が求められます。
ペナルティを受けないためにも、期間内にしっかりと手続きを行ないましょう。

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