はじめに
岸田政権が持続可能な社会の実現を目指してスタートアップ支援を行っていることをご存じでしょうか。
スタートアップ支援に関して既に1兆円規模の予算措置が決まっており、新たに起業を考えている方にとっては追い風となる情報と言えます。
「スタートアップ育成5か年計画とはどのような内容なのか?」
「ビジネスをしていくうえでどんなメリットがあるか知りたい」
このように思われている方のために本記事ではスタートアップ育成5か年計画について、厚生労働省の公式資料をもとに内容を分かりやすく説明していきます。
「スタートアップ育成5か年計画の内容を理解したい」という方はぜひ最後まで読んで参考にしてください。
スタートアップ育成5か年計画とは?
スタートアップ育成5か年計画はスタートアップをはじめとした企業等のイノベーションを促進するためにつくられた政策です。資源を集中させるため、官民による日本のスタートアップ育成策の全体像がまとめられています。
まずはその背景や目的について解説していきます。
スタートアップ育成5か年計画の背景
政府はなぜこのような計画を作ったのでしょうか。
まずスタートアップ育成5か年計画が作られるされることになった「背景」と「目標」を厚生労働省の公式資料をもとに見ていきましょう。
出典:厚生労働省 スタートアップ育成5か年計画
まず問題として挙げられているのは開業率やユニコーン(時価総額1,000億円超えの未上場企業)の数の少なさです。「起業する方」も「大きく育つベンチャー」も少ないということです。
今は大企業として存在している日本の電機メーカーや自動車メーカーも、戦後にスタートアップとして創業されて大きくなる過程を経て今があります。20代や30代の若者が会社を大きくし、日本の経済を牽引してきました。
2022年もスタートアップ企業は生まれていますが米国や中国などに比べて開業率やユニコーン(時価総額1,000億円超えの未上場企業)が少ないのは明らかです。
また、既存の大企業との連携も重視しています。
「スタートアップ起業の加速」と「既存の大企業のイノベーション」を促進して、さらに起業をしやすくする循環を創り経済成長を目指すことが政府の考えとしてあります。
スタートアップ育成5か年計画の具体的な目標
「具体的には何を目指すのか?」と気になっている方もいるでしょう。政府は数値目標も掲げており、具体的な目標を見ていきます。
出典:厚生労働省 スタートアップ育成5か年計画
細かな目標もありますが大きく分かりやすい目標として、政府は具体的には下記2点を掲げています。
- 5年後に10倍の10兆円規模の投資額
- ユニコーン(時価総額1,000億円超えの未上場企業)100社、スタートアップを10万社創出
スタートアップの投資額は2017年時点から5年で2.3倍の8,200億円になりました。本計画によりこの投資額をさらに10倍して10兆円規模まで引き上げることが一つの目標です。2022年12月時点で既に過去最高の1兆円規模の投資が閣議決定されており、現時点で良い兆候が見られていると言ってよいでしょう。
また、ユニコーンと呼ばれる時価総額1,000億円超えの未上場企業の数を100社、スタートアップを10万社創出して世界有数のスタートアップの集積地を目指すことを掲げています。
スタートアップ育成5か年計画の3本の柱
スタートアップ育成5か年計画ではより具体的な方向性として下記の3本の柱を掲げています。ここではその内容を見ていきましょう。
- スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
- スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
- オープンイノベーションの推進
一つひとつその内容を解説していきます。
第1の柱:スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
まず1つ目の柱について見ていきましょう。
政府は「若者で起業が望ましい選択肢と考える人が少ない」ことが起業の少なさに直結していると考えています。日本で起業家を増やすには、そのように起業にハードルを感じてしまう意識や風土を変えていきたいという背景があります。
その上で掲げている12個の具体的な支援がこちらです。
- メンターによる支援事業の拡大・横展開
- 海外における起業家育成の拠点の創設(「出島」事業)
- 米国大学の日本向け起業家育成プログラムの創設などを含む、アントレプレナー教育の強化
- 1大学1エグジット運動
- 大学・小中高生でのスタートアップ創出に向けた支援
- 高等専門学校における起業家教育の強化
- グローバルスタートアップキャンパス構想
- スタートアップ・大学における知的財産戦略
- 研究分野の担い手の拡大
- 海外起業家・投資家の誘致拡大
- 再チャレンジを支援する環境の整備
- 国内の起業家コミュニティの形成促進
出典:厚生労働省 スタートアップ育成5か年計画
メンターによるサポートや教育機関との連携をより強化するような内容から海外起業家向けの支援など、1つめの柱だけでもかなり数が多いです。
なかには具体的に数値目標が盛り込まれている内容もあります。例えば起業をサポートするメンターの数を年間で70人規模だったところを500人に、海外への起業家の派遣を5年間で 1,000 人規模にすることを掲げています。
再チャレンジを支援する制度の整備なども注目すべき内容です。2022 年に雇用保険法の改正が行われ、本来なら離職後の原則1年は失業給付が受けれないところを、事業を行っている場合最長3年まで受給期間に算入しないという制度を設けました。
起業が上手くいかなかった際の再チャレンジを後押しする仕組みと言え、起業のハードルを下げてチャレンジしやすい風土作りに繋がっていくか注目です。
第2の柱:スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
続いて2つめの柱も解説していきます。
起業して事業を存続させるためには資金をどのように集めるかが重要になります。課題として挙げているのが「資金調達の額が米国などと比較して低い」ということです。
過去に投資した企業が採用やイノベーションに積極的だったという事実もあり、ベンチャーキャピタルというスタートアップに出資する投資会社と協力して支援を進める予定です。
より具体的な内容も見ていきましょう。
- 中小企業基盤整備機構のベンチャーキャピタルへの出資機能の強化
- 産業革新投資機構の出資機能の強化
- 官民ファンド等の出資機能の強化
- 新エネルギー・産業技術総合開発機構による研究開発型スタートアップへの支援策の強化
- 日本医療研究開発機構による創薬ベンチャーへの支援強化
- 海外先進エコシステムとの接続強化
- スタートアップへの投資を促すための措置
- 個人からベンチャーキャピタルへの投資促進
- ストックオプションの環境整備
- RSU (Restricted Stock Unit:事後交付型譲渡制限付株式)の活用に向けた環境整備
- 株式投資型クラウドファンディングの活用に向けた環境整備
- SBIR(Small Business Innovation Research)制度の抜本見直しと公共調達の促進
- 経営者の個人保証を不要にする制度の見直し
- IPO プロセスの整備
- SPAC(特別買収目的会社)の検討
- 未上場株のセカンダリーマーケットの整備
- 特定投資家私募制度の見直し
- 海外進出を促すための出国税等に関する税制上の措置
- Web3.0 に関する環境整備
- 事業成長担保権の創設
- 個人金融資産及び GPIF 等の長期運用資金のベンチャー投資への循環
- 銀行等によるスタートアップへの融資促進
- 社会的起業のエコシステムの整備とインパクト投資の推進
- 海外スタートアップの呼び込み、国内スタートアップ海外展開の強化
- 海外の投資家やベンチャーキャピタルを呼び込むための環境整備
- 地方におけるスタートアップ創出の強化
- 福島でのスタートアップ創出の支援
- 2025 年大阪・関西万博でのスタートアップの活用
全部で28個あり、ベンチャーキャピタルの強化、海外投資家や海外スタートアップの呼び込みなど幅広い取り組みが予定されています。数値目標が公表されているものもあり、これからのスタートアップ界隈を見通すのに役立つでしょう。
中小企業基盤整備機構という中小企業をサポートする団体は、ベンチャーキャピタルへ200億円の投資強化を図る予定です。また、産業革新投資機構という産業支援のための投資団体は4年間で 1,200億円規模の投資実績を倍規模にすることを公表しています。
海外展開の内容もあり、米国や中国などに比べてユニコーンが少ない現状を課題に感じている内容が見られます。未上場のスタートアップの支援は強化されるでしょう。
社会起業家の支援やWeb3.0の推進など、具体的な取り組み内容まではまだ固まっていないようですが今後の取り組みは注目したいところです。
第3の柱:オープンイノベーションの推進
3つめの柱であるオープンイノベーションの推進についても見ていきましょう。
オープンイノベーションとは「自社のみならず他社や教育機関などと連携して革新的なビジネスや研究成果を目指す」イノベーションの方法論です。
出典:厚生労働省 スタートアップ育成5か年計画
既存の大企業の成長も日本経済のためには欠かせませんが、成長を維持することは容易ではありません。しかし大企業もスタートアップと連携して新技術を取り入れることで持続的に存続可能になり得ます。
既存の大企業のイノベーションを促進する意味でもスタートアップへの投資が重要だと政府は考えています。
具体的な内容も見ていきましょう。
- オープンイノベーションを促すための税制措置等の在り方
- 公募増資ルールの見直し
- 事業再構築のための私的整理法制の整備
- スタートアップへの円滑な労働移動
- 組織再編の更なる加速に向けた検討
- M&A を促進するための国際会計基準(IFRS)の任意適用の拡大
- スタートアップ・エコシステムの全体像把握のためのデータの収集・整理
- 公共サービスやインフラに関するデータのオープン化の推進
- 大企業とスタートアップのネットワーク強化
政府はスタートアップのエグジットのかたちに注目しています。エグジットとは、ベンチャー企業の創業者などが自分の保有する株を売ることにより投資した資金を回収する方法のことを言います。
主に「IPO」と「M&A」という2パターンあります。簡単に説明するとIPOは「株式公開により株式市場で投資家に株を売る」ことで、M&Aは「企業の合併・買収により株式を売る」ことです。
米国ではスタートアップのエグジットのかたちとしてM&Aが9割を占めるのに対して、日本はIPOが8割です。既存の大企業とイノベーションを促進する観点ではM&Aの割合が大きいことが望ましいでしょう。
3本目の柱の具体的な内容では特にM&Aの促進についての言及が多いです。
出典:厚生労働省 スタートアップ育成5か年計画
税制などのルールにより大企業のスタートアップへのM&Aが阻害されていることが挙げられています。ルールの改善によりスタートアップのエグジットが多様化に向かうことも十分考えられるでしょう。
大企業発ベンチャーの創出のためにはスピンオフも重要です。スピンオフとは企業内の一部門を切り離して独立させることを意味します。
社内で生まれたアイデアをよりかたちにしやすくする仕組みです。スピンオフを行う企業に持分を一部残す場合は課税の対象外と公表しており、イノベーションが生まれやすい環境になったと言えるでしょう。
副業や兼業の促進など様々な方に関わってくる内容も多いです。具体的な数値目標については言及がまだ無いようですが今後の発展が注目されます。
まとめ
本記事ではスタートアップ育成5か年計画について、その背景や目的、具体的内容などを解説しました。
資金調達や起業プログラムなど、上手く活用してイノベーションが推進されるか今後注目です。スタートアップ支援に関して既に1兆円規模の内容が閣議決定されており、今起業を考えている方にとって非常に嬉しい環境が整いつつあります。
起業を考えている方は本記事の内容を参考に資金の調達も検討した上で、初期費用やランニングコストをなるべく抑えて事業を推進したいところです。
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