個人事業主として事業が軌道にのってくると「そろそろ法人化しようかな」と感じたり、周囲から「そろそろ法人化したら?」など言われることも増えるでしょう。
法人化にあたっては、個人事業主よりも決めておくべき事柄が多く、専門知識や事前準備が必要です。
この記事では法人化にあたっての準備や手続き、流れをご紹介します。
1、法人化とは?
法人化とは、株式会社やNPOなどを設立することを言います。
法人化とは株式会社などの営利法人を設立することと捉えることが多いでしょう。
しかし法人化とは営利法人だけではなく、NPOや社会福祉法人、財団法人などの非営利法人も含みます。
「法人化」という言葉以外にも、「法人成り」「会社設立」などの言葉が用いられることがありますが、同じ意味で使用されています。
2、法人化のための事前準備
法人化するためには事前準備が必要です。
個人事業主として開業する際よりも決めておくべき事柄や専門知識を必要とする事柄も多くあります。
この記事を参考に、1つずつていねいに準備を進めていきましょう。
会社形態を決める
会社の形態には株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4つがあります。
さまざまな縛りや複雑な手続きはありつつも、将来の事業の拡大においてメリットや社会的信用が大きいのが株式会社。
合同会社はコストが低く、小回りがきき、自由度が高くスピーディな経営が図れる反面、資金調達に限りがある点や、上場できないなど将来的な発展に関しては限度がある点がデメリットです。
合名会社・合資会社は会社形態としてはあるものの、さまざまなリスクがあり、現在ではこの2つの形態で法人化されることは少ない傾向にあるようです。
会社形態については複雑な面が多々ありますので、税理士に相談しながら決めてもよいでしょう。
屋号を決める
屋号、つまり会社名です。
読みやすく、覚えてもらいやすい屋号にすることはもちろんですが、法人の屋号に関しては以下のルールがあります。
- 使用が許可された文字・記号を使用する
- 名前の前後のいずれかに会社形態を入れる(例:株式会社○○、もしくは○○株式会社)
- 似ている会社名は避ける
上記ルールにのっとって屋号を決めましょう。
また同じ住所内に同じ会社名の法人は設立できません。
会社用の印鑑を準備する
会社名の実印が必要となります。
屋号が決まったら、事前に購入しておきましょう。
事業目的を定款に定める
会社の設立には、会社のルールブックとも言える「定款(ていかん)」を作成します。
定款には事業目的を記載します。
ここで注意したい点は、定款に書かれた事業以外は行えないという点です。
ですので、現時点では行えない事業であっても、将来的に行いたい事業であれば定款に記入しておきましょう。
事業目的に「附帯関連する一切の事業」の一文を入れておくと、のちのち新しい事業を開始したい場合、柔軟に活動できます。
所在地
会社の所在地を決定します。
会社の所在地は自宅でもオフィスでも、バーチャルオフィスでも構いません。
本社として設定したい場所を所在地としましょう。
資本金の決定
資本金は1円でも法人化できます。
しかしあまりに少額ですと、社会的信用度は得られません。
初期投資金額と、運転資金3か月分程度を足した額が資本金として適切でしょう。
会社設立日
法務局に登記申請を行った日が会社設立日となります。
思い入れのある日や希望の日がある場合には、その日程で登記申請が行えるように準備をすすめましょう。
ただし法務局は土日祝日はお休みとなります。
そのため、土日祝日を会社設立日とすることはできません。
会計年度
会計年度は通常1年ですが、その起点となる日、終点となる日は自由に決められます。
事業の繁忙期となる時期が決算となると、非常に大変です。
決算月が繁忙期になるのを避けて、会計年度を設定すると良いでしょう。
役員や株主の構成
会社形態に応じて、役員組織や人数が定められています。
定めに応じて、会社組織、株主構成を決定します。
3、法人化の流れ
法人化の手続きをご紹介します。
定款(ていかん)の作成
定款(ていかん)とは、いわば会社のルールブックです。
事業の目的や役員の人数、組織図などを決め、記載しておく書類となります。
定款には記載しなければいけない項目があります。
必要項目が記載されていない場合、その定款は無効となるので注意しましょう。
定款は3部作成し、ページごとに見開き部分に発起人の実印の割り印と、最終ページに発起人の実印の押印が必要です。
定款の認証
株式会社を設立する場合には、公正役場で認証をうけなければいけません。
オンラインで定款を作成することも可能です。(電子定款)
オンラインの場合、公正役場に出向く必要もなく、収入印紙も不要となりますが、専用ソフトの導入が必要となります。
株式会社・一般社団法人・一般財団法人以外は、定款の認証は必要ありません。
資本金を支払う
定款の準備ができたら、資本金を発起人の代表の個人口座に振り込みます。
資本金の支払いが完了したら、払込証明書を作成し、口座通帳の表紙の裏表のコピー、入金が記帳されているページのコピーとともに、ホチキスで綴じます。
登記申請する
ここまで来たら、いよいよ法務局での登記申請となります。
会社形態ごとに必要な書類を準備し、法務局に提出します。
法務局に登記申請を行った日が、会社設立日です。
提出から登記完了までは1週間~10日程度かかります。
登記申請後の手続き
無事に登記が完了したら、法務局にて以下の手続きを行いましょう。
- 印鑑カード取得
- 印鑑証明書の交付
- 登記事項証明書の交付
この3点を取得しておくことで、法人名義の銀行口座の取得が可能となります。
法人化当初の手続きにおいて、何かと必要となる書類ですので早めに取得しておくと便利です。
なお、この手続きは郵送でも可能です。
個人事業の廃業の届出の提出
法人化の前に個人事業主であった場合、税務署に「個人事業主廃業届」を提出しましょう。
こちらは廃業から1か月以内に届け出ます。
青色申告を行っていた場合には「所得税の青色申告取りやめ届出書」を、スタッフを雇い給与の支払いがあった場合には「給与支払事務所等の廃止届出書」も税務署に提出します。
5、法人化にあたってのQ&A
法人化にあたってよくある質問をご紹介します。
法人化にかかる費用は?
法人化の手続きにかかる費用は、どのような形態で法人化するかによって異なります。
- 株式会社の場合:22万円~
- 合同会社の場合:10万円~
(上記費用は定款用収入印紙代を含んだ額ですが、電子定款の場合には、収入印紙代は不要となります)
この費用は法人化の手続きにおいてかかる費用です。
このほか税理士に依頼して法人化する場合には、依頼費用が必要となります。
資本金はどれくらい必要?
資本金は初期投資に加えて3か月程度の運転資金を加えた額を資本金とすると良いでしょう。
資本金は1円から可能ですが、あまりに低すぎる資本金では、社会的信用が低くなります。
法人化までどれぐらいの時間がかかるの?
法務局に登記申請を提出し、登記が完了するまではおよそ1週間~10日ほどです。
この期間は登記申請から完了までの期間であり、事前準備期間は含まれていません。
事前準備を手際よく進めることができれば、事前準備から登記完了までは2~3週間ほどで完了できるでしょう。
法人化すると税金が高くなる?
個人事業主であっても売上が1,000万円以上の場合には消費税の納税義務が発生します。
またインボイス制度開始以降は、売上金額に関わらず、インボイス発行事業者として登録をした事業者は、消費税を支払わなければいけません。
このように法人化と消費税の納税には関係はありません。
しかし新規で法人を立ち上げた場合、立ち上げ後2年は消費税が免除となる制度があります。
長期的に売上が1,000万を超す場合には、法人化した方が節税となるでしょう。
今後、事業の拡大を考えている場合には、法人化したほうが税法上のメリットがあったり、赤字を10年繰り越せるなど(個人事業主の青色申告の場合には赤字は最大3年繰り越し)のメリットがあります。
売上が1,000万円近くになったら、今後の展開を踏まえて法人化を検討してはいかがでしょうか?
今後の事業展開も踏まえて、税理士に相談してみるのもおすすめです。
法人化のメリットとデメリットは?
法人化の最大のメリットは、社会的信用度が高い点です。
また上記項目でもお伝えしたように、売上が今後も拡大する見通しがあるのであれば、税法上メリットが出てきます。
また赤字を10年繰り越すこともでき、節税対策にもつながります。
法人化におけるデメリットは、法人化することにおけるデメリットはランニングコストがかかるという点です。
赤字であっても税金を支払わなければいけませんし、社会保険へ加入が義務となるため、その分の費用がかかります。
法人化すると事務作業や税務・会計作業は非常に複雑になります。
専門知識がなければできない業務も増えます。
そのため、知識やスキルのあるスタッフがいなければ、税理士や公認会計士に依頼することになり、その分のコストがかかってきます。
法人化することで個人事業主時代よりもコストが一層かかるようになってきますが、それを励みにさらなる売上拡大、事業拡大を目指すモチベーションにしても良いでしょう。
法人相手に仕事をする場合には、法人化しておいた方が信頼も得やすくなります。
仕事が獲得しやすくなるメリットは大きいものです。
バーチャルオフィスでも法人登記が可能
法人化にあたって、本社所在地はバーチャルオフィスでも登記が可能です。
都内の一等地に住所があれば自社の信用度は上がり、仕事の獲得に結びつきやすくなります。
とはいえ、都心の一等地にオフィスを構えるのは家賃コストが高くなります。
法人化したばかりの企業の場合、なるべくコストは抑えたいもの。
そこでバーチャルオフィスの出番です。
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